東京古禅美術館とは


東京古禅美術館は、数千年の歴史を誇る東アジアを中心としたアジア広域の古美術品を数多く収蔵する総合的美術館です。コレクションの中には、仏像、屏風、絵画、陶器などがあり、仏像を主とした幅広い分野にわたる展示を開催しております。





代表メッセージ




2019年4月15日、900年近くの歴史を持つノートルダム大聖堂が大火で焼かれました。同年4月16日、熊本県の阿蘇山火山が再び噴火しました。このように毎日、世界では人類にとって想定外のことがたくさん起きています。

地球上の生物の中でも、人は自分の運命を把握したいと最も願っている生き物です。

今まで人類は、高等知能を持つ動物としてある程度さまざまな災害に対抗し、予防してきました。

そんな人類の高等動物としてのもう一つの大きな特徴は、自身の最高の思考レベルを表現する象徴的な芸術品を創り出せることにあります。

古仏像は、まさにこれらの象徴的な芸術品の一つでしょう。

東方の各民族——中国、日本、インド、韓国、朝鮮などのアジア諸国は、過去千年から二千年の間、さまざまな形の古仏像、古美術品を形作ってきました。そしてこれらの作品は、現代にいる私たちに人類という高等生物の最上階の精神世界がどれほど豊かかを示してくれます。

ライオンやトラは最も獰猛な動物ですが、簡単な絵すら描けません。

ゾウは動物界の有名な力持ちですが、簡単な絵すら描けません。

伝説上では、鶴千年、亀万年と長寿の生き物として知られている鶴も、亀も、同じように絵については何も知りません。

ですから、古い絵、古い芸術品というのは、人類という地球上でも最高級の知能を持つ生物としての最大の特徴を体現しているのです。

東洋に伝わる数多くある古美術品の中でも、古仏像は最も代表的な意図を持って造られています。

古仏像は、古代アジアの歴史、古代社会、古代の人々、私たち日本人と中国人の祖先の精神世界への憧れと追求を表現してきました。

製作当時、私たちの先祖は、日常生活のさまざまな不備、不安、不満に苦しんでいたことでしょう。そんな彼らを苦境から抜け出させ、宗教的信仰を託され、恐怖から生まれた未来への思いや憧れを込めて造られたのが、さまざまな形態を持つ優美で奥深い古仏像でした。

ノートルダム大聖堂は焼失し、世界中が心を痛めています。

同じように毎日、アジアだけでも、中国、日本、韓国各地の古代遺跡の名残が消え去っています。

現在でも何十万体もの古仏像が人知れずに消えてしまうという損失は、ノートルダム大聖堂を焼き払うことに等しいといえます。

そんな静かに消えたしまった古仏像を救うために、東京古禅美術館は創立されました。

また、私たちは、日本に限らず、中国や欧米諸国など、世界のあらゆる場所で理想的な文化研究施設として世界最大規模の古仏像美術館を創ることを望んでいます。そのため、私たちがすべきことは、一般的な美術館にみられるようなただ作品を陳列して展示するだけではいけません。

東京古禅美術館は、以下のように機能します。

まず、本館は古代文化・伝統を学べる大学としての役割を担っています。

東京古禅美術館では、1800年前から数十年前までの幅広い時代に渡る何千もの異なる造形の古仏像が収蔵しており、私たちはその背後にある社会と歴史を理解することができます。そして、展示品を通じてアジアの各地域における古代社会の社会的変化と文化的変化、人類の進化と古代の人々の息吹を感じ、時空を超えて彼らと対話できます。

アジア全体の歴史、中国の歴史、日本の歴史、インドの歴史、韓国の歴史、及び東南アジアの各方面の歴史を象徴し、古代文明の存在を証明する美術品も数多く展示されるため、本館は歴史大学でもあるのです。

つぎに、本館は私たちを精神的に癒し、私たちの心の休息地となります。

現代社会で生きる私たちは毎日、自覚しているかに関わらず、さまざまな心理的ストレスに耐えています。

例えば、一人で仕事をして失敗したとき。

または、すでに成功していたとしても、先行きに不安を感じたとき。

あるいは、宗教をすでに信仰していても、追求する宗教の最終目的の意味を理解できなかったとき。

このような場合、私たちは外力を借りることによって心を落ち着かせることが必要となります。東京古禅美術館は、そんな精神的なストレスを抱えた人々に癒しを与え、皆の心を広げ、緊張した神経を緩めることができます。

本館の収蔵した数多くの古仏像に囲まれた神秘的で静寂な雰囲気の中、日ごろの忙しさを忘れて心を休ませることで、固定概念から解放され、より快適に生を感受することができるようになります。

このような前例のない壮大で不思議な空間での貴重な体験は、唯一無二の東京古禅美術館だけのものとなります。

本館は最高レベルの博物館として文化伝承に貢献します。

何もせずとも、毎日のように私たちは数多くの広告を目にします。その数は、きっと10,000件に近いことでしょう。道路を歩くとき、テレビや映画を視聴したとき、買い物をしたときなど、意図せずとも、広告はごく自然に私たちの生活に浸透してきました。

そのため、現代人の心は、昔と比べ、非常に複雑だといえます。

それでも時代を超越して私たちの心の拠り所となり、はるか遠い昔の人々の思いを伝え、その理想と精神、美の価値について共有できるように古仏像は遺されました。

東京古禅美術館では、そんな美術品たちに隠された熱情と社会的意義、文化的背景を誰もが感じられるようにすることを望んでいます。

そのため、館内展示物はすべて、宗教や政治から切り離され、純粋に現代社会にいるすべての人々のためにあると私は考えています。

ぜひ、教養を深める場としても、精神治癒の場としても、本館に訪れてみてください。

最後に、美術館を創立するにあたり、協力してくださった日本と中国のあらゆる分野で活躍している友人たちに、この場を通じて御礼申し上げます。

東京古禅美術館が私たちの精神世界を豊かにし、数千の古仏像たちが皆さまの心身の健康を守ってくださることを願っております。






            

          東京古禅美術館 代表   梁 蔭全